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汗をかけない若者の増加

2018-08-07
ブログ
山崎

■汗をかくことの重要性

汗が蒸発するときに奪う熱のエネルギーはとても大きく、同じ量の水が100℃から0℃に冷えるときに吐き出される熱の量のおよそ5倍にもなる。

したがって、恒温動物である人類が体温を調整するうえで、汗をかくということはことさら重要なのである。

■能動汗腺

汗は、能動汗腺から分泌される。だから、能動汗腺の数は体温調節機能に大きく関わってくるのである。

そして、能動汗腺が発達するのは生まれてから約3年間だけであり、3歳以降は一生涯能動汗腺が増えることはないそうである。

つまり、汗をかけるか否かは、3歳までに決まってしまい、その体質は一生涯のものとなってしまうのである。

■汗をかけない若者

能動汗腺は、冷房の効いた空間で育つと発達しにくい。つまり、生まれてから3歳までの間、暑い季節に冷房の効いた空間を中心に過ごすと、汗をかけない体質へと育ってしまう可能性が高くなるのである。

高気密高断熱住宅は冬暖かく夏涼しいという謳い文句を見聞きした方が、大勢いるのではないか。確かに、一理ある。しかし、その場合の夏涼しいという意味は、冷房効率が良く、冷房の効きが良いから涼しいというものである。あくまでも冷房が前提であって、冷房を使わない想定は成されていないのではないだろうか。最近では、24時間全館空調(冷暖房)というようなことを売りにする住宅も見かけるようになってきている。

更には、保育所、幼稚園、学校での冷房普及、電車や車内の冷房と、一日のほとんどを冷房の効いた空間で過している人が増えているのではないだろうか。

その結果、汗をかけない若者が増加し、専門家が注意喚起をしているのが現状である。

■汗をかけないとどうなる?

汗をかけない体質の人は「夏バテしやすい」「熱中症になりやすい」「怖い低体温症になりやすい」といった症状になりやすいと指摘されている。

28度程度の気温でも熱中症になりやすいといわれているので、専門家は暑い時期の運動には注意が必要であり、場合によっては別メニューが望ましいとまで訴えているのである。

最近では、高校生などの若者が部活などの運動中に熱中症で倒れ、亡くなるという痛ましい事故を見聞きするようになってきたが、こういった影響があるように思えて仕方ないのである。

また、基礎代謝が落ちる低体温症では、細胞の新陳代謝も活発ではなくなり、免疫力も低下する。風邪などの感染症にかかりやすく、そして治りづらくなる。花粉症などのアレルギー症状も出やすくなると、いわれている。

更に、全体的に不調、疲れやすい、元気がないといった状態が恒常的になりがちで、「集中力がない」「キレやすい」といった問題行動も低体温症によって引き起こされ、学習や生活に大きな影響を与えてしまうといったことも指摘されているのである。

■ある稲作法に学ぶ

田んぼを耕さず、農薬や化学肥料を使わず、米を生産する不耕起稲作法という農法がある。

千葉県成田市で農業を営んでいた岩澤信夫さん(故人)が考案した農法で、労力やコストをかけずに付加価値の高い米を生産することが出来るということで、近年注目を集めている。

この稲作のおおまかな方法は「土を耕さない」「苗を低温の厳しい環境で育てる」「成苗を堅い土の田んぼに植える」「収穫期のおよそ十日前まで水を深く入れて管理する」というものだそうで、その特徴は「労働力を省力化できる」「稲が病害虫に強くなるので農薬がいらない」「切りワラを放置して肥料にするので化学肥料を使わない(大幅に減らせる)」「通常栽培に比べ2~3割収穫量が増える」「品質が良い」「冷害や旱魃に強く安定した収穫量があがる」「香りが良くたいへん美味しい(炊いてから時間がたっても美味しい)」「丈夫なので台風がきても倒れにくい」「米粒が揃って大きい」「コストは規模に関わらず半分以下になる」「自然の生態系が復活する」「地球の温暖化を促進するメタンガスの発生が従来農法の十分の一以下になる」というようなもの。

さて、この農法の最大ポイントはどこにあるのであろうか。それは育苗を厳しい環境で行うということではないだろうか。

岩澤さんは、稲は暑い地方から寒い地方まで日本全国で取れることから、我々が考えているよりはるかに環境適応力のある丈夫な植物ではないか。それなら苗の段階で厳しい条件で育てれば良いのではないかと考えて、低温で管理し、育苗後半の田植え前十日間は水田に出して育てることにしたのだとのこと。

このことを住宅とそこに住まう人、特に子供たちに置き換えてみたらどうなるであろうか。

■宇宙飛行士にみる

宇宙に滞在する場合、筋肉が急速に衰え、心臓の働きも低下することが分かっている。

そのため、宇宙飛行士は訓練中に筋力トレーニングやランニングなどの運動を約2時間、週に3回程度行うとのこと。そして、宇宙に滞在中は1日2約時間半の運動がほぼ毎日実施され、さらに地上に帰還してからリハビリを行うとのこと。

では、なぜ宇宙に行くと筋肉が衰えてしまうのだろうか。地上では、重力に抗して姿勢を維持する必要があるため、抗重力筋は絶えず活動する必要がある。

しかし、宇宙では、重力が存在しないため、身体を支える必要がない。そのため、意識的に筋肉を動かさないと筋線維が細くなってしまうと考えられているからである。

僅か数日から数週間の宇宙滞在で、骨格筋は顕著に委縮する。太ももの筋肉は、たった5日間の宇宙滞在で筋線維が11~24%も萎縮し、11日間の宇宙滞在ではなんと16~36%も萎縮したと報告されている。

そして、使わないことによる筋肉の委縮は、宇宙飛行士だけでなく、寝たきりの人や健康な老人にも起こるとされている。

つまり、使わない機能は衰えていくのである。

■汗をかく環境にないと

暑い時期に四六時中冷房の効いた中で生まれ育つということは、汗をかく機会が少ないということに他ならない。この場合、使わない機能が衰えていくのではない。機能が発達しないのである。つまり、能動汗腺が発達しないのである。その結果、汗をかけない若者へと成長するのである。

能動汗腺が発達するのは、3歳までである。それまでの期間、適度な暑さで汗をかく環境が必要であり、重要なのである。

■そのために

そのためには、冷房なしでもある程度過しやすい家づくりが求められるのではないか。

寒さ対策を考えれば高断熱化は必須であり、私も全く持って同意する。しかしながら、単純に断熱だけを高めることは、暑さ対策を冷房頼みにするということでもある。そして、現在の家づくりの多くは、その方向に進んでいる。果たしてその方向が、本当に望ましい方向なのだろうか。今後益々進む温暖化のことも考えれば、尚更である。

今こそ、冬暖かく、夏は冷房なしでも過ごしやすい家づくりの在り方を、真剣かつ速やかに検討し、取り組むべきではないだろうか。汗をかけない若者を生み出さないために。

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