1)熱移動の3要素
一般的に熱は高温部から低温部へ移動する性質を持っており、熱の移動は熱伝導とも呼ばれています。
そして、熱は3つの要素によって移動します。それは、「対流」「伝導」「輻射」という3要素です。
つまり、どんな熱であっても、「対流」「伝導」「輻射」という3つの要素によって、暖かいほうから冷たいほうへ移動が起こるということになります。
2)対流熱
加熱された物質(気体、液体)が流動することによって熱が移動することを言います。
水や空気を暖める場合、暖められた水や空気は流体となって上昇(移動)します。
つまり、物質が熱を持って移動することとなります。そして、この熱移動要素を対流と呼んでいます。
分かりやすい例を取り上げてみましょう。
鍋でお湯を沸かすとします。直に熱を加えるのは鍋の底の部分だけですが、鍋の中で作られるお湯はどの部分でもほとんど均一の温度となります。
これは、暖められた水が熱を持つことによって膨張し、軽くなることで上方へ移動し、それに伴い、上方にある冷たい水が下方へ移動することで起こります。
また、エアコンは少しでも温度差を少なくして冷暖房するために、風を強制的に出して対流を起こし、熱移動をさせているのです。
3)伝導熱
物質と物質が直に接することによって熱が移動することを言います。
熱は高温部から低温部へと伝わりますから、氷枕を当てれば頭が冷やされますし、湯たんぽを当てれば足が暖められるというわけです。
また、アイロンも伝導熱を利用した機器です。
4)輻射熱
あらゆる物質は熱を放射(※1)しています。ただしそれは電磁波として放射されており、電磁波そのものには熱はありません。
しかし、電磁波が物質に衝突することで物質の分子が振動し、熱が放出されます。そしてそれを輻射熱(放射熱)と呼んでいます。
電子レンジは電磁波を発生させることにより、レンジ内の食品の分子に超高速で振動を与えることで(2.4GHzであればなんと1秒間に24億回もの振動を与えます)、食品に熱を移動しています。
太陽からも熱線が出ています。しかし、その熱線は全く熱を帯びていません。ところが、地球の大気中にある水分粒子やダスト、さらに地表や建造物などに衝突することでそれらの分子を強く振動させ、熱(輻射熱)が放出されることとなります。
※1
温度は物質の熱振動をもとに規定されており、下限が存在します。
そしてそれは、熱振動(原子の振動)が小さくなりエネルギーが最低になった状態のことです。
この時に決まる下限温度が絶対零度(-273.15℃)と呼ばれ、古典力学では原子の振動が完全に止まった状態であると考えられており、その場合には熱が放射されないということになります。
5)分子について
全ての物質は原子から出来ています。もちろん人体もです。
原子のまん中には原子核があって、その周りを電子が取り囲んでいます。
原子核は単に核ともいい、原子の中心に位置する非常に小さい塊で、核を構成する陽子と中性子等を核子といいます。
原子核は陽子の数に応じたプラスの電荷を帯びていて、水素原子では陽子一個のみですが、それ以外の原子ではいくつかの陽子と中性子から構成されています。
そして、原子核の周りをマイナスの電荷を帯びた電子が回っています。
そして分子とは、原子が複数結合された物体で、物質の性質を失わないで存在しえる最小の単位(粒)のことです。
その分子が、赤外線によって高速に振動することで発生するのが、輻射熱なのです。
6)熱移動の3要素の割合
それまでは熱移動の大半は対流と伝導で起こると考えられてきましたが、1920年から輻射による熱移動の考え方が体系化され、ペンシルバニア州立大学とオークリッジ国立研究所によって報告がなされ、熱移動に対して輻射によるものが75%程度を占めるということが公となりました。
そしてこのことは、現在では諸研究機関の統一見解となっています。
一方で、伝導熱は5~7%にしか過ぎません。
また、対流熱では下方への移動は全く生じないということが分かります。
7)断熱材は熱伝播遅効型熱吸収材料
空気の熱伝導の低さを利用しているのが断熱材です。
断熱材は中に空気を閉じ込め(さらに熱伝導の低いガスを閉じ込めているものもあります)、それによって壁や天井などに空気の層を設けることで、熱の移動を遅らせます。
熱の移動を防ぐのではなく、あくまでも遅らせるという効果であり、これが断熱材が熱伝播遅効型熱吸収材料と言われる所以です。
つまり、熱を吸収することで熱が伝わるのを遅らせる材料です。
ですので、断熱性能の違いは熱移動に要する時間、つまり熱が伝わってくるまでの時間の違いであり、高性能なほど熱の移動に時間が稼げるということです。
8)断熱材は輻射熱のほとんどを吸熱
熱伝播遅効型熱吸収材料ということは、言い換えれば蓄熱材であるということです。
では、断熱材は熱移動の大半を占める輻射熱に対して、どの程度の効果があるのでしょうか。
断熱材が撥ね返すことの出来る輻射熱は、10%程度に過ぎません。
輻射熱(放射熱)のなんと90%程度を吸収し、やがてその熱を放射します。
そして、吸収する熱量が多いほど、陽が沈んでから冷めにくいということとなりますので、建物内の熱帯夜化を助長するということにもなってしまいます。
9)蓄熱量が多ければ冷めにくい
グラフの赤線は高断熱住宅の内部、青線は低断熱住宅の内部、黄土色の線は外気(正式な気温観測ではありません)の温度を示しています。
好天のときは一般的に陽の出のタイミングが一日の最低気温を記録し、そこから気温が上昇していきます。
外気及び低断熱住宅内部の温度は、日の出とともにどんどん上昇していきます。
一方で、高断熱住宅内部の温度は、緩やかな上昇となっています。
これは、高断熱のメリットです。断熱材が熱を吸収することで熱が住宅内に伝わる時間を遅らせている証拠です。
しかし、日が沈んでからはどうでしょうか。
外気及び低断熱住宅内部の温度は、日没が近付くとぐんぐんと下降していきます。
片や高断熱住宅内部の温度は、穏やかな下降に留まっています。
これが、高断熱のデメリットです。蓄熱量が多いため、冷めにくくなっている証拠です。
緑色の点線は、日中に職場や学校で過し、夜は自宅で過す生活パターン(移動時間は考慮せず)を示しています。
そのような生活パターンでは、日中は低断熱の暑い空間、夜間は高断熱の暑い空間で過すこととなり、一日中冷房漬けとなりやすいでしょう。
10)輻射熱の移動を防ぐことの出来る材料
断熱材は輻射熱に対する反射率が低く、輻射熱のほとんどを吸収してしまいます。
熱移動の多くを占める輻射熱の影響を防ぐには、輻射熱に対して反射率の高いものを熱移動対策として使用することが必要となってきます。
では、どんなものの反射率が高いのでしょうか。
表から、銀、金、アルミの反射率が極めて高いことが分かります。
11)アルミが遮熱シートとして使われる
銀、金、アルミが輻射熱の反射率が高い、つまり輻射熱の移動を防げる素材であることが分かりました。
しかし、銀と金は高額なため、アルミが輻射熱の移動を防ぐ材料として、使われるようになってきたのです。
そして、それは一般的に遮熱シートと呼ばれています。
12)反射率を如何に向上させるか
アルミの反射率は92.45%(アルミ金属国際基準の認定値)です。
ですので、高純度アルミ箔を表面に加工しただけでは、これを超える反射率を得ることは出来ません。
しかし、高純度のアルミ箔に光沢度(光沢度とは純分率と研磨率からなります)を加えることで、更に反射率を向上させることが可能です。
最も高い反射率を実現したアルミ遮熱シートであれば、なんと反射率は99%に達しています。
アルミ遮熱シートにも様々な種類がありますが、出来るだけ輻射熱の反射率が高いものを選択して下さい。
なぜならば、反射率1%は熱抵抗値に置き換えると15%程度といわれていますので、例え反射率が数%の違いであっても、その違いは大きなものとなるからです。
13)高性能アルミ遮熱シートの効果/温熱
では、高性能アルミ遮熱シートは、どの程度の効果があるのでしょう。
写真は、高性能断熱材で覆った箱と高性能アルミ遮熱シートで覆った箱の中にそれぞれ温度計を設置し、ストーブで至近距離から数時間熱をあてたものです。
ストーブを真夏の太陽、箱を建物と仮定してみて下さい。
箱(建物)の中の温度はいかがでしょうか。
これが高性能アルミ遮熱シートの効果であり、ストーブによる赤外線で発生する輻射熱が箱の内部、如いては建物の内部に移動することを防いでいる結果なのです。
一方、高性能とはいっても蓄熱材である断熱材は、時間がたてば熱が箱(建物)の内部に移動してきて、温度が上昇していくのです。
そして、断熱性能の違いとは、この熱が移動してくるのに要する時間の違いなのです。
14)高性能アルミ遮熱シートの効果/冷熱
高性能遮熱シートであれば、セルシウス度(摂氏)でマイナスのような冷熱も高効率で反射します。
ですので、冷蔵倉庫や冷凍倉庫にも採用されているのです。
冷熱を高効率で反射することにより、冷熱の損失を大幅に減らし、ランニングコストを軽減します。
また、高性能遮熱シートであれば、外部の熱は外部に、内部の熱は内部に撥ね返すので、外部の温熱と内部の冷熱が交わることも防げるので、結露防止にもなります。
このことは、高性能遮熱シートが寒さ対策としても大いに有効であることを示しています。
15)温暖化抑制のために
温暖化を抑制するためには、温室効果ガスの排出削減が不可欠です。
そのためにも、建物内の冷暖房の省エネ化を図っていく必要があります。
今後は温暖化で気温が上昇していくことを考えれば、寒さ対策に加えて、暑さ対策が重要性を増していくことでしょう。
なぜなら、冷房のほとんどは電気をエネルギーとして消費します。そして、日本の電気の75%程度は火力発電です。
温暖化に伴って、冷房の普及がより一層進む、冷房の使用頻度が高まることが予想され、消費電力が増大し、温室効果ガスの排出量が増えてしまうからです。
そうしないために、熱移動の多くを占める輻射熱に対して、高効率で対処していく必要があるでしょう。
そして、それを実現出来るのが高性能アルミ遮熱シートなのです。
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