1)暑さ対策の勘違い/軒を深く出せば効果がある
軒を深く出すことによって暑さ対策になると考えている方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
本当にそうなのでしょうか。
効果がないわけではありませんが、かなり限定的です。
なぜならば、夏期に南面が受ける直達日射量は少ないからです。
これは、夏期の太陽高度が高くなることによるもので、その結果、水平面つまり屋根面が受ける直達日射量が非常に多くなります。
東面と西面も直達日射量が結構多いのですが、東の太陽並びに西の太陽は高度が低いので、軒を少しくらい多めに出しても防ぐことは出来ません。
2)暑さ対策の勘違い/西日対策をしっかりすれば大丈夫
確かに暑さ対策において、西日の影響を抑えることは大切な要素のひとつです。
しかし、東面に比べて西面が受ける日射量が多いという訳ではありません。
西面と東面がうける日射量は同程度なのです。
では、なぜ西日が暑く感じるのでしょうか。
それは、東面、南面、水平面が受ける日射量で屋内の温度が上昇したところに、東面と同じ量の日射量が降り注ぐからです。
ですので、西面同様に東面の暑さ対策も重要です。
そして、もっと重要なのが水平面、つまり屋根面の暑さ対策です。
3)暑さ対策の勘違い/通風(風通し)の良い間取りにする
暑さ対策の一環として、風の通る道を考えて設計するというようなことも言われます。
そこで、皆さんに質問です。
「冷房を使う時に窓はどうしますか?」
そうです、風通しを良くするという暑さ対策は、冷房を使わないで済む程度の暑さ、冷房を使わない前提での暑さ対策です。
温暖化が進むにつれて、真夏日や猛暑日が増え、40℃超えの激暑日も現実のものとなりつつあります。
そのような現在、そして今後を考えれば、風通しを良くするという暑さ対策は、どれほど効果を発揮出来るのでしょうか。
4)暑さ対策の勘違い/高断熱にすれば暑さを防げる①
断熱材は蓄熱材です。正確には「熱伝播遅効型熱吸収材料」なのです。
つまり、熱を吸収することで、熱が伝わるのを遅らせるという機能の材料です。
ですので、断熱性能を上げる、断熱材を厚くするということは、蓄熱量を増やすことによって熱の伝わる時間をより稼ぐということです。
熱が伝わる時間を遅らせることは出来ても、決して熱を断つということは出来ません。
そして、蓄熱量を増やすということは、冷めにくくするということでもあるのです。
だから、高気密高断熱の家が魔法瓶に例えられるのです。
5)暑さ対策の勘違い/高断熱にすれば暑さを防げる②
断熱性能を高める、つまり蓄熱量を増やすことによって、冷めにくくなるということがとても分かりやすい例は、天気が良く暑さの厳しい日の夜に、冷房を掛けていない2階(最上階)と外で、どちらが暑いか、あるいは涼しいかを比べてみることです。
外は無断熱といっていいでしょう、そのような断熱のない空間と、高性能断熱材に包まれた空間と、どちらが涼しく感じられることでしょうか。
6)暑さ対策の勘違い/薄っぺらな遮熱材では無理
遮熱材は熱(輻射熱)を撥ね返す材料です。
暑い時期に上から押し寄せてくる大量の熱を撥ね返すことが出来れば、暑さ対策に多いに効果的です。
そして、遮熱材は断熱材とは逆で、薄ければ薄いほど良いのです。
ただし、様々な種類があり、ものによって性能(熱の反射率)に大きな開きがありますので、注意が必要です。
性能をしっかりと見極めて、きちんと選択するようにして下さい。
7)暑さ対策の勘違い/断熱材と遮熱材を併用しても意味がない
寒暖差の大きな地域では、太陽高度が高くなる夏には屋根から押し寄せる大量の熱は遮熱材で撥ね返す、太陽光後の低くなる冬には壁に降り注ぐ直射で発生する熱を断熱材で蓄熱する。
また、暖房時の熱は天井の断熱材で蓄熱するなど、断熱材と遮熱材を組み合せることによって、一年を通しての快適性を向上させることが可能です。
しかし、遮熱材に関してもう一つ注意して頂きたい点は、扱い方(施工方法)です。
遮熱シートの多くは、アルミ製品です。
そして、アルミは熱伝導率が高い素材です。
例えば、断熱材とピッタリ合わせて使用すると、断熱材が蓄熱した熱の影響をもろに受けてしまいます。
せっかく遮熱材を施工したのに、ぜんぜん効果が得られないということに成りかねません。
8)暑さ対策の勘違い/冷房効率の良い建物をつくる①
冷房効率の良い建物にするということは、ある意味で暑さ対策に有効です。
そして、高気密高断熱にすることで、冷房効率は向上します。
しかしそれは、暑さ対策を冷房頼みにするということでもあります。
なぜなら、蓄熱量が多くなる分、冷めにくくなり、夜間はかえって暑い空間となってしまうからです。
日中に仕事場、学校や幼稚園に通っている方々は、どうなるでしょうか。
仕事場や学校、幼稚園などは、断熱の低い建物が多いことでしょう。
すると、日中冷房の中で過す、移動(車、公共交通機関など)も冷房の中、夜間はタップリ蓄熱した建物の中で冷房で過す、つまり、一日の多くを冷房の中で過すということに成りはしないでしょうか。
9)暑さ対策の勘違い/冷房効率の良い建物をつくる②
冷房の中で過す機会が多いということは、それだけ冷房の弊害に見舞われる可能性も高くなるということです。
では、どのような冷房による健康面でのリスクが考えられるのでしょうか。
●冷房の効いた空間で過す時間が長くなったことで、汗をかけない、かきにくい体質の子ども、若者が増えています。
●汗をかけない、かきにくい体質の人は、熱中症になりやすくなります。
●歳を重ねるにつれて冷房嫌いの傾向が高くなり、それに伴い熱中症のリスクも高まります。
●ペットは限られたごく一部でしか汗をかくことが出来ず、人間より体温調整が苦手で熱中症になりやすい。
そのため、留守宅でもペットのために冷房を掛けっ放しというケースが増えており、ペットの健康面、環境面にも悪影響を及ぼします。
●ヒートショックと思われてきた浴室での死亡事故の多くのケースは、冬の熱中症であることが分かってきました。
熱中症になりやすい体質は、冬の熱中症にも陥りやすいということでもあります。
10)暑さ対策の勘違い/全館空調にする①
全館空調は快適です。夏でも冬でも建物内にほとんど温度差がなく、とても過しやすいです。
私も以前に何棟か手掛けさせて頂きましたし、体験してきましたし、推奨していました。
しかし、冷房の弊害、特に汗をかけない、かきにくい子どもたちが増えてきているという事実を知ってから、考えを改めました。
なぜなら、ホール、トイレ、洗面脱衣室、浴室、全ての屋内が冷房の中にあるということは、より一層冷房漬けになることをもたらすこととなり、より一層汗をかけない、かきにくい子どもたちを増やしかねないからです。
11)暑さ対策の勘違い/全館空調にする②
全館空調は当然のことなのですが、リビングだけというような局所冷房よりも電気を消費します。
しかも、24時間ずっと空調(冷暖房)しっぱなしとなれば、尚更です。
電気はエコであると勘違いされがちなのですが、灯油やガスと比較して、二酸化炭素排出係数が倍以上なのです。
日本の電気の凡そ75%は、火力発電で賄われているからです。
ですので、電気消費量が増えるということは、より多くの二酸化炭素を排出するということであり、脱炭素から遠ざかるということでもあるのです。
12)暑さ対策の勘違い/全館空調にする③
一般的に、男性より女性の方が寒がりだと言われます。実際にそうなのでしょうか。
そこで「男女の生理機能の違いが体感温度の違いを生む/日経トレンディネット」から転載します。
「まず、男女間の温度感覚の差ですが、体感で2℃ぐらいの差があるのです。そうした研究は1970年代からけっこうされていて、この差は、基本的には基礎代謝の違いが影響しているとわかっています。男性は、女性と比較して脂肪が少なく、筋量が多い。そのため、基本的に代謝が高い。体の中で熱をたくさん作っているのです。一方、女性は男性と比較すると代謝が低い。体内で男性ほど熱を作りません。
この違いは、体温を一定に保とうとする機能にも影響します。男性は熱を多く作るので熱を逃がして体温を一定に保とうとします。熱を逃がすために汗をかく。汗ばむような気温でなければ、末梢の皮膚血管を拡張させて、熱を外に逃がします。それで体温が高くなるわけです。女性は、そんなに熱を作っていないので、体温が低め。皮膚血管を拡張させなくても、だいたい一定に保てるわけです」。
というように、女性は男性より代謝が低いという体質により、男性より寒がりということが言えます。
そしてこのことが、男性より女性が冷房によって体調不良に陥るケース多いという状況を生じさせています。
全館空調の場合、部屋ごとの温度調整は出来ません。ご家族の快適温度に個人差が大きい場合、寒がりな女性の健康が犠牲にされかねません。
13)暑さ対策の勘違い/暑さは冷房で凌げば良い①
理想は、冷房頼みにしない暑さ対策なのではないでしょうか。
何故ならば、冷房の使用頻度を減らすことが出来れば、健康面への弊害を軽減できるからです。
例えば
などです。
14)暑さ対策の勘違い/暑さは冷房で凌げば良い②
更に、冷房の使用頻度を減らすことが出来れば、環境面への弊害も軽減出来ます。
具体的には
●冷房による電力消費量を軽減出来る
その結果、二酸化炭素(温室効果ガス)の排出削減が図れる
●ヒートアイランド化を軽減出来る
なぜなら、冷房は室内温度を2℃下げるのに室外機から5℃の熱を放出するので、冷房を使えば使うほどヒートアイランド化を助長することとなるから
●電力需要のピークである夏の電力消費量を抑制出来る
その結果、需要が供給を上回ることによって生じるブラックアウト(大規模停電)のリスク軽減につながる
また、電力は需要と供給のバランスが取れていなくてもブラックアウトしてしまうので、電力需要のピーク(夏)と需要の底(冷房も暖房もいらない時期)との供給量(発電量)を調整する必要があり、そのことに大きな役割を果たしているのが二酸化炭素排出量の多い石炭火力発電なので、ピークと底の差が縮まれば、石炭火力も廃止しやすくなる
などです。
15)暑さ対策の勘違い/冷房頼みにしない暑さ対策なんて無理①
決して無理なことではありません。
夏場に水平面(屋根面)が受ける大量の日射によって生じる大量の輻射熱(放射熱)を撥ね返してしまいましょう。
上から下に押し寄せてくる熱の93%は輻射熱(放射熱)です。
そのほとんどを撥ね返してしまえば、屋根裏の温度上昇を大幅に抑制出来ます。
これを軸にし、東、南、西面の開口部(窓)に遮熱タイプのガラスや遮熱シェードなどを併用するなどしていけば、冷房頼みにしない暑さ対策が実現します。
16)暑さ対策の勘違い/冷房頼みにしない暑さ対策なんて無理②
具体的には、屋根裏に高性能遮熱シートを施工します。
これによって上からくる輻射熱のほとんどを撥ね返すことが可能です。
そうすれば、屋内の温度上昇を大きく抑制することが出来、冷房が不要とはいかないまでも、冷房頼みにしない暑さ対策が実現するのです。
また、冬は暖房によって生じる熱が上昇して逃げていくのを防ぐとともに、冬の夜に屋根の上から降りてくる冷たい熱(コールドドラフト)も撥ね返します。
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